形態のモナドへ

 「予定調和」という言葉がある。
それは相互に無縁でそれぞれ独立した世界を構成する単子(モナド、実在を構成する究極の物的、心的要素)があたかも互いに関係のあるような状態を示すことである。ライプニッツはその原因をあらかじめ各単子の間には神によって調和が生じるように定められている関係があるからだ、と説明している。「予定調和」とはその関係をあらわした表現である。

 主観的観念論の先駆として現代思想にも多大な影響を与えたライプニッツより遡ること百年、その単子と単子間の関係を一つの行為とその時間的エネルギーの中に表現しようとした思想家がいた。千利休である。

千利休とその「茶」が四百年を経た今日においてもその魅力を失わない理由は、人間の心身の関係やその物質的表象である形態とその配置という普遍的な問題の追求を時間的行為の中に凝縮しているからである。
 ハイテク時代とよばれる現代において、私たちはともすればその物質的側面に振り回され、技術的目的にその目を奪われやすくなっている。しかしながら、人類の技術発展の歴史を振り返った場合、そこには人間のイマジネーションが深く関わっていることを知るのである。

 つまり、人間が発想したその時点で技術と形態は決定されている、とさえ言えるのである。飛行機しかり、ロケットやコンピュータしかりである。私たちが「月」に行きたい、と思いついた瞬間からもう月世界旅行は始まっていた、と言ってもよいだろう。ただ時間のレンジをどのように解釈し、跳躍するか、という問題だけである。ハイテクなのは技術ではない。人間のイマジネーションという無形の実体なのである。

 とすれば、いま私たちがこのような時代にあってもう一度考え直さなければならないことは物質的な機能や形態に潜むモナドであり、その相互の関係なのではないだろうか。茶美会「素」は素材の素でも、質素の素でもなく、形態と行為に含まれる「単子」と「調和」を探る旅である。そして、それは「創造」という行為における時間的誤解を解く旅なのかもしれない。

茶美会 素

開催主旨

「茶美会」は、ただ単に茶道の造形的な外観やしつらえを変貎させることが目的ではなく、日本の伝統と現代文化という一見相反してみえる文化の相剋を、伝統の側からモダニズムに一石を投じ、現代文化の側からも伝統へ問題提起をおこなうという現代文化の実験現場です

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会期     
1993年9月29日(水)~10月3日(日)
会場     
原宿クエストホール
企画・立案   
田中一光(グラフィックデザイナー)
企画・構成   
伊東順二(美術評論家)
空間設計    
内田繁(インテリアデザイナー)
空間照明    
藤本晴美(照明デザイナー)
環境音楽    
三枝成彰(作曲家)
衣服デザイン  
菱沼良樹(ファッションデザイナー)
茶室制作・演出 
北川原温(建築家)
黒川雅之(建築家)
杉本貴志(インテリアデザイナー)
田中一光(グラフィックデザイナー)
中村宗哲(塗師)

アートディレクション 
田中一光(ポスター)
長友啓典(カタログ)
菓子ディレクション  
多田侑史(裏千家今日庵 執事)
料理ディレクション  
井上旭(シェイノ)
河田三郎(つる幸)
小山裕久(青柳)
辻義一(辻留)
菓子器製作     
近藤高弘(陶芸家)
清水柾博(陶芸家)
中里嘉孝(陶芸家)
藤原和(陶芸家)
眞清水伸(陶芸家)
料理器製作   
大樋年雄(陶芸家)
喜多俊之(デザイナー)
麹谷宏(グラフィックデザイナー)
中村宗哲(塗師)

待合壁画    
浅葉克己(グラフィックデザイナー)
宴席壁画    
田中一光(グラフィックデザイナー)
写真撮影    
稲越功一(写真家)
畠山崇(写真家)
制作進行     
茶美会文化研究所
亭主       
伊住政和(茶美会文化研究所 主宰)
主催        
財団法人 国際茶道文化協会
後援        
毎日新聞社
運営        
茶美会文化研究所

香合出品者
秋山育 浅井慎平 浅葉克己 粟辻博 五十嵐威暢
伊藤隆道 稲越功一 上田浩史 内田繁 
エットーレソットサス 大樋長左衛門 大樋年雄 小川待子
川上元美 川崎和男 北川原温 喜多俊之 木田安彦  
清水柾博 黒川雅之 小池一子 麹谷宏 コシノジュンコ 
近藤高弘 佐藤晃一 鈴木エドワード 千住博 
タナカノリユキ 津村耕佑 戸田正寿 内藤こずえ
中里嘉孝 中村公子 中村公美 長友啓典
スタジオ・ナッソ 檜垣青子 菱沼良樹 日比野克彦
日比野充希子 藤平伸藤平寧 藤原和 舟橋全二
眞清水伸 松永真 三橋いく代 樂吉左衛門
ローラン・ジュベール 脇田愛二郎
            (五十音順 以上五十名)

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