「CHARAMIX.COM」コンセプト

 20世紀初頭に、フランスのエミール・コールやアメリカのウィンザー・マッケーによってアニメーション映画が登場して以来、映像は実写という枠を越えて、新たな想像と創造の時代に突入していった。人間の身体や環境の条件にその表現を大きく左右される通常のフィルムの世界とは異なって、想像のおもむくままに展開されるアニメーションは、映像言語に、かってない、豊かで斬新なヴォキャブラリーを提供したのである。アニメーションの誕生によって人間は、初めて、自らの空想世界と同じように「動く」イデアを手にしたといってよいだろう。その意味においてはデジタル時代に先駆けて、アナログによるヴァーチャルな環境を、アニメーションは提供したのである。

 その「動画」の表現と内容をより実りあるものとしたのは、その中で生き生きと活躍するキャラクターたちである。フェリックス、ミッキー・マウス、ドナルド・ダック、グーフィー、プルート、ポパイ、ベティ・ブープ、バッグス・バニー、ポーキー・ピッグ、ダフィー・ダック、トゥーティー・パイ、シルベスター、ウッドペッカー、トムとジェリーといった人気者たちは、物語の主人公というだけではなく、人間の想像力の化身でもあったのである。その証拠に、彼らは多くの世代のアイドルになっただけではなく、芸術やデザイン、コミュニケーションに至るまで多くの表現にインスピレーションを与えつづけたのである。

 平成12年度Jam3企画展「CHARAMIX.com」は、このようなアニメーションの世界と、それに伴う表現芸術の方法をデジタル時代に移植しようとする、日本初の本格的試みである。この企画は、3Dアニメーションのヴァーチャルな環境に従来のキャラクターを移しかえるだけではなく、一般公募によって、新たなアーチストと作品の発掘を実行し、21世紀の表現ヴォキャブラリーの拡充を実現するものである。

 また、未来のエンターテインメントへの展開についても、ミックスト・リアリティの新たな研究成果を導入することによって、その可能性を示唆し、今後のエンターテインメントのあり方についての具体的な提案を行う。そして、そのすべてのドキュメントはインターネットとテレビ・メディアでカヴァーされる、という同時進行型インタラクティヴ・プロジェクトである。

また、同時に、従来の製作と現場の関係性だけでは把握できない、デジタル時代ならではの、新たな著作権の設定についても、製作と活用プロセスのシミュレーションを行いながら、実際的で具体的な提案を行い、製作物の権利保護の普遍的な形を追求したいと思っている。ヴァーチャル環境の中を人間のポジティヴなクローンとして活躍するキャラクターたちは、人間と同じようなフレキシブルな権利を認められなければならない。このような多様で、多角的な試みを通して、方法論は出尽くしながらも、その総体の具体化への前進がいまだ立ち遅れている21世紀型メディア芸術の環境作りへの現実的な提案を行いたいと私たちは願っている。

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